情報デザインのカリキュラムのデザイン
情報デザインのように歴史の浅い分野では、むかしから決まっている‘定型の’カリキュラムというものがあまりない。1年生から4年生までの授業の体系を考え、確実にそれぞれの授業を実現できるように‘デザインする’のは、けっこう難しい。理想論だけでは絶対にうまくいかない。
もちろん、これまでのデザイン教育の中で実践されてきた様々な授業は、とても役に立つ。また、多摩美の場合には上野毛の二部デザイン学科(当時)で生み出された‘資産(授業)’もあるので、まったくゼロからつくるわけではない。情報デザイン学科を新設してから8年間の経験と実績も使える。
それにしても、毎年見直しをかけていかないと授業があっという間に陳腐化する、というキケンと常に隣り合わせなのが、どうやらこの分野らしい。(・・・ということに、5年目くらいにやっと気付いた。いつまでもカリキュラムが定型化しないことに当時は焦った。今は、そういうもんだと思うことにしてる(^^;)
いちばん難しいのは、カリキュラムのどこまでを現状維持にして、どれを新しくするか、という見極めと判断。なんでも手当たり次第に新しくしてしまったら、あちこちで初期不良やエラーが出るし、無茶をするとカリキュラムの体系が崩れてしまう。。。学校の授業は「止めてメンテナンスをする」ことはできない。
ところで、「新しく開拓する」部分は、デザインの先を見通す力を持っている人か、新しいセンスを持っている人にしか切り開けないんじゃないかと、最近思っている。理屈じゃなくて‘センス’。それを信じる方が決断が早くできるのだ、たぶん。
僕もふと気がつけば40歳を過ぎている(着任時は30代半ば)。まだその「センス」はなんとか維持しているつもりだけれど、そろそろ若い世代(20〜30代)に「情報デザイン」のカリキュラム・デザインに加わってもらわないと、この先はちょっとまずいんだよね。・・・これ本音。
‘若くてセンスのいい人’といっしょに、新しい授業やカリキュラムをデザインしたいなぁ、と思うこのごろである。もちろん、「カリキュラム・デザイン」は、‘これまでの経験’がモノを言う部分もたくさんあるので、経験でなんとかなる部分はおまかせを。(^^)
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コメント
卒制を見ると、もう少し技術動向だとか、時代をみるセンスがないと、何のための卒業制作なのか良く解らない物が多くて問題ですね。
上野毛から来た時、八王子の山の上だと、そういう時代感みたいなのが、かなり薄い気はしましたが。
あと、卒制は毎年リセットしちゃうのはなんでなんでしょう?
アートの方は毎年積み重なって行っているというのに・・・・・・
投稿: 1093 | 2006.03.17 14:16
1093、コメントありがとう。
技術動向はやろうと思えば教えることはできるけど、「時代をみるセンス」は教育で身につけさせるのは無理かもしれませんねー。(^^;
まぁ、研究室やゼミで、毎年継続的に同じテーマを取り上げてるなら、「積み上げて」いくのが普通のやりかたですよね。僕は、そういうことを特別に強く意識して指導してないので、自分の担当した学生/作品については何とも言えませんけど。。。
似たようなテーマなら前年の作品を見せたり解説することは一応するんですけど、そこから始めたらレベルが確実に上がるかというと、きっちり上がる場合もあり、ぜんぜんそうならない場合もあり。・・・デザインという‘創造性を扱う’教育の難しいところです。指導のしかたに正解がないので、いまだに日々、試行錯誤であります。
投稿: よしはし | 2006.03.19 01:24