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多摩美プロダクトの卒展を見る

4日の午前中に原宿へ行く。多摩美プロダクトの卒制はいつもレベルが高いのだが、展示を見て行くうちに今回は会場に並ぶ作品の雰囲気が何か違うのに気が付いた。レベルの高さの‘質’が違う。もちろんいい意味で。

説明の学生さんに話を聞きカタログを読んで納得した。「(思考や発想の)プロセスがちがう」のだ。今年初めての試みとして「Deepen(深化)」という課題を設定したとのことだった。
前期に始まったこの課題は、学生それぞれが2つのテーマを自由に選んで、徹底的にそれにこだわり、調べたり実験的な試作をしたりする。カタログによれば「自身のデザインを深化させることが目的である」。という。

Deepen1 Deepen2
上の写真は、「美的要素をデザインに応用する研究」仙田周平(Deepenの過程での実験的な試みの一部)、これを活かして「切れ込みから生まれる造型をいかした照明」をデザインしていた。

最終作品として会場に並んでいたのは、プロダクト(製品)のデザインなのだが、カタチにいたる前の‘深化’のプロセスがデザインに‘滲み出て’いる作品が多く、斬新なアプローチや考え方、表現方法がすばらしかった。
一方、カリキュラムとしてみたときには、この‘Deepen(深化)’という課題は、(プロダクトデザイン教育の)イノベーション(進化形)だと言えるかもしれない。

作品は他にも、自然界のモチーフとレイヤーの実験を経てデザインされた「空間を柔らかくする間仕切りの提案」川端奈緒子、色の樹脂を積層したラミネート板を使い傷や摩耗による色の変化を生み出した「旅の軌跡を記憶する旅行鞄」羽場友子、木造建築の仕口の技術をアクリル素材で展開した「伝統を現代に活かすプロダクト」平岡好泰など。
(原宿での展示は終わってしまったので、見逃した方は、八王子で。)

ちなみに、説明員の学生さんに「はじめは、不安じゃなかった?」と聞いてみたところ、Deepenの成果が見えてくるまではやはり‘何ができるかわからずにものすごく不安だった’そうである。そこをぐっと我慢してこの領域にまでたどり着けたのは、先生方の熱心なご指導と学生さんにたちのそれまでの地道な学びの蓄積あってのことだろうと思う。プロダクトデザイン学科の‘底力’を感じた今年の卒制展だった。

いいもの見せていただきました。ありがとうございました。

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