デザインの再定義とイノベーション人材の育成
AXIS 10月号 の記事から。(p76-80)
アートセンター・カレッジ・オブ・デザインと、イリノイ工科大学のデザイン大学院教育を取材している。
アートセンターの『デザインの再定義』が、たいへん興味深い。「学際的なチームが世界の大きな問題を目前にして、オリジナルでクリエイティブな解決方法を探求することがデザインである」という。
IDEO社のイノベーションへの取り組みやスタンフォード大学のD-schoolの動向、イノベーションを起こせる組織や人材への社会的な注目が背景にあることは容易に想像できるが、‘あの’アートセンターが、あえて「表現」を語らない点は(かつて目にした‘圧倒的な表現力’を知っている者にとっては)少々ショッキングですらある。
「ここでは未だ存在しない職種のためのトレーニングを行い、企業でチェンジ・エージェント(変化の起点)となる人材を生み出したい」とは、同大のアン・バーデック教授の言葉だが、まるで、多摩大MBAのリーダーシップ論や知識経営論の講義を聞いているようだ。
一方、イリノイ工科大学(大学院のみ)のカリキュラムの80%はものづくりとは無関係で、クラフトではなく方法論を徹底的に学ぶという。
今後、日本のデザイン教育(大学院)が「同じ方向に舵を切る」ことになるのか(いまのところそのような大学院は現われていないように見える)、これまでのように「構想と表現」を軸とした研究・教育を維持するのか、あるいはどちらでもない新しい別の方向性を見出すのか、、、
ここ数年が日本のデザイン教育(大学院レベル)の将来を決める転機になるような気もしている。
どのような‘枠組み’で扱うにせよ、「デザインの学び」にとって‘表現すること’が重要であることには変わりはない。しかしながら、「表現」を‘メインに据える’ことをやめた時に‘デザイン教育にいったい何が残るのか’という問いもまた避けて通れないものだろう。
(ひとごとのように言っている場合ではないのだが。。。)
AXIS 08月号にはスタンフォード大・D-schoolの記事が載っています。
Art Center College of Design : Leading by Design
IIT Institute of Design
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コメント
職場におけるマネージメント研修で出会うタームや概念と、情報デザインの教育の現場で使われるそれが似ているように感じるのはそういう理由があったわけですね。
なぜこんなところで既視感を感じるのだろうかと思っていたところです。
投稿: TQY | 2008.09.20 13:58
ここ数年は、「イノベーション」が経営における重要課題のひとつですね。
そこから「イノベーションの源泉としての創造的思考」や「デザイン・シンキング」などに話が及ぶと、おっしゃる通り、「(広義の)マネジメント」と「(情報)デザイン」のある種の重なりが見えてきます。
僕は多摩大のいくつかの授業を受けながら、「なんでこんなところで・・・」って思いました。(笑)
投稿: よしはし | 2008.09.20 18:22